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全国小劇場ネットワーク会議「はじまり」をふり返る【2】横浜・二つの新たな創造の場にて

よく言えばオブザーバー(観察者)、悪く言えば外野でしかないにも関わらず、それまでのささやかな自分の取材行脚に芯が通った気がし、個人的に盛り上がってしまった第一回小劇場ネットワーク会議。その9カ月後の2018年8月28(火)、29日(水)には、はやくも第二回会議が開催され、しかもちょっとした「依頼」もいただき、強い夏の日差しに風景まで白茶けたような横浜の、若葉町ウォーフに駆けつけた(が、ちょっと遅刻した)。

 若葉町ウォーフは元は金融機関だった築50年の建物をリノベーションし、前年6月にオープンした劇場、スタジオ、宿泊施設の三機能を備えたアートスペース。運営するのは演劇関係者や地元のNPOなどで構成された一般社団法人横浜若葉町計画で、その代表理事とウォーフの芸術監督を務めるのが劇作家・演出家である佐藤信氏だ。基調講演は佐藤氏による「わたしの劇場史」。太平洋戦争中に生まれ、70有余年の人生の大半を舞台芸術を近しくしながら過ごし、ウォーフに至るまで民間・公立、自劇団でのテント劇場含む13もの劇場の立ち上げに関わってきたというその仕事の足跡は、初日午前いっぱいを使ってなお語り切れないほどのボリュームだ。1960年代中盤から現在までの演劇シーンだけでなく、日本の文化や経済を巡る状況変化を俯瞰する、貴重なエピソード満載だった。

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 昼食休憩を挟んだ後は、ArtTheater dB神戸、静岡・藤枝の白子ノ劇場、愛媛・松山のシアターねこの三館から地域の舞台芸術シーンを語る情報提供。
 続いて、各地の劇場が他地域の劇場や制作体に向け、自主企画やツアー展開を図りたい地域の演劇人との協働作品などをプレゼンテーションするコーナー。ここで、筆者は取材者の立場から各地で出会った“旅(移動)を糧にできる劇団、旅させやすい・旅に強い作品”というくくりで、団体を紹介させていただいた。10分の持ち時間はあっという間で、取材での対話との違いにひたすら汗をかく羽目に陥った。反省。

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 さらに、第一回に引き続き、6人のホストが掲げるテーマごとに分かれて行うグループディスカッション。全国18都市から集まった60人超の参加者が、三々五々意見を投げ合うその様は実に壮観……と書きたいところだが、筆者はこの日、夜の便で翌日からの宮崎取材へ向かわねばならず、プレゼンテーションまでで中座しなければならなかった。
 なので残念ながら、さらにその後の、会場をThe CAVEに移した懇親会の様子も写真で見るばかりだ。The CAVEは、2016年10月に伊勢佐木町にオープンした民間のクリエイティブ拠点。10数年も空き室だったという商店街イセザキモールの入り口に立つ築90年のイセビルの地下空間を、市議会議員・不動産事業者・劇作家・建築家のチームで立ち上げた株式会社を中心にリノベーションに当たり、運営指針にもさまざまな工夫が凝らされている。前回同様、各地で創造のための「場」を運営する人々に、新たな「場」に触れ、そこからの刺激やアイデアを持ち帰る機会とすることも、この会議が担う大切な役割なのだと、選ばれた会場を通して得心した。

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 二日目は午前に、参加者全体でこのネットワークの展望について話し合い、閉会となった。日を改めて、第二回の総括を野村政之に取材したところ、「初回は祭り的に盛り上がると予想していましたが、今回も募集の段階から、前回を上回る熱が参加希望者から感じられ、続けていけるという手応えがありました。当然二日目には、このネットワークの組織化についての話も出たのですが、今回は見送ることに。始動から一年も経っておらず、参加者が求めるものと会議の方向性をすり合わせていくための時間も、まだ十分とは言えませんから。ただ地域を越えて劇場間で協働する企画や、問題解決のための横断的取り組みは既にいくつか動き出しており、それらに並走できる組織の形を、僕自身の関わり方も含めて考える必要があると思っています」との言葉が。

 考えてもみなかった、地域の劇場文化を横断する広く自由な視座。そんな舞台人としての強力な武器を持つ人が、全国小劇場ネットワーク会議開催のたびに確実に増えていく。限られたファンだけでなく、地域や社会と強く結び、舞台芸術へと還元する人々が集まる「場」の可能性は、回を重ねるごとに高まっていく。
 それは、第3回でさらなる現実味を帯びることになるが、それはまたの機会に。

Text:尾上そら


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